誰も知らない

是枝裕和監督、柳楽優弥主演。本当に観たい映画ってそうそうあるもんじゃないけど、
この映画はまさに絶対観たい映画だった。。わりにはやっと今頃。。遅すぎ!!
実話に基づいている、ってところとやっぱりカンヌで賞を取った柳楽優弥にも興味があったし。

物語は本当に淡々と静かに進行する。演技は作り込まれたものではなく、自然な感じというかドキュメンタリー仕立てのようになっている。その自然さが、妙にリアルな感じをかもし出している気がした。何度も同じ失敗を繰り返す愚かな母親をYOUが演じているが、彼女もまた演じているというよりは、地でやっているように見えた。最後の方になると、長男明が大きくなっているように思えたのだが、後で撮影に1年を費やしたと知って納得。よりリアリティが追求された感じか。

子供達は皆、実に健気でいじらしい。特に明。。本当ならば学校へも行って勉強し、友達と遊びやスポーツに夢中になる年頃のはずなのに。
つかの間の夢の時間が過ぎる。その夢の時間が楽しければ楽しいほど、現実の世界が重くのしかかる。そして何も知らない下の子たちとは裏腹に、長男はもちろん長女もそれを感じ取っていた。お年玉のシーンなんかは、本当にやるせなく切なくなる。

はがれ落ちてほとんどなくなった爪のマニキュアなどに見られるように、この映画では時間の流れをとても上手く演出してある。
そしてきょうだい達は皆、父親が違うんだろうなあ等と観ている側に想像させる。
こういう撮り方は凄く好きだ。余計な、説明じみたものが嫌いだからか?

大人になる前の若者が彼等と触れあうのは、なんだか皮肉で。コンビニのバイトの子や、同じ年頃の少年たち。いじめを受けている女子高生との交流。。
きょうだい達のことを大人は誰も知らない。女子高生の親も、現実の彼女のことをきっと知らない。知ろうとしない。なんて寂しい子たちなんだろう。
それでもこの映画を観終わって、涙も出なければ誰のことも憎く思えないのは不思議だ。ただ、陰鬱とした重い空気に包まれるだけ。こんな描き方をするなんて、凄いとしか言い様がない。

子供たちと女子高生が歩いていく後ろ姿のラストシーン。
ひょっとしたら母親はひょっこり帰ってくるかもしれない。帰ってきてくれたらいいな。そんな淡い期待まで、珍しくしてしまった私なのだった。
こういう映画こそ特典が欲しかったのになー。
DVDを買えということか!?ウーン。


私はこの映画のモチーフとなった1988年の「巣鴨子供置き去り事件」を全く知らなかったのだが、
この映画を観て、どんな事件だったのかと調べてみた。
現実はもっと、想像以上にひどくて。。
こんな現実は、私の周りにはないよね。ないはず。。
でももしかして、この瞬間私が「誰も知らない」大人
の一人だったら。。そんなことを思った。



「巣鴨子供置き去り事件」


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by suga_m | 2006-09-18 15:48 | 映画
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